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No.79 アメリカの病院でも「帰脾湯」を有効に活用

 最近,アメリカのTIME誌(2014/4/28日付)に,オハイオ州クリーブランドの病院に1月から開設された「ハーブ療法科」を紹介する記事が掲載されています.名称はアメリカ人にわかりやすい「ハーブ療法」ですが,本場の中国の漢方(中医学)を学んだアメリカ人セラピストが,内科医と治療記録を共有しながら本格的な中医学診療を行います.

 不眠・不安と体力低下に長年苦しんできた地元の59歳の婦人の症例が記されています.現代医学の薬は副作用が不快で,サプリメントや針治療もあまり効果なく,新設されたこの科で受診する機会を得ました.「帰脾湯」(中国語の表音つづりでgui pi tang) が適用され,3ヶ月服用しました.その結果,夜よく眠れるようになり,日中は元気が出て,不安もなく,落ち着いた生活が送れるようになったと,「ハーブ療法」に救われた喜びを語っています.

 「帰脾湯」は宋代(13世紀)の方剤書を原典とする処方で,後の元・明・清代にわたって改良が加えられ,構成生薬と適応症が確立されました.「人参」・「黄耆」・「白朮」で,心身の機能を支えるエネルギーの不足(「気虚」)を補い,元気と体力を回復します.同時に,「当帰」・「竜眼肉」・「酸棗仁」で,栄養分を隅々の組織にまで届ける血液供給の不足(「血虚」)を補い,心身を安定させ,不眠や不安を解消します.

 このような漢方の考え方が,今や言語・文化の壁を乗り越えて理解され始め,全人類の健康に貢献する歩みを進めていると言えます.