No.98 認知機能の障害に対する漢方の広い視野

2019-02-28

 認知症は,以前は痴呆症と呼ばれ,老化現象とも思われてきましたが,現在は,記憶や見当識などの認知機能の障害として,アルツハイマー型・脳血管性・レビー小体型・前頭側頭型などに分類され,研究が進んでいます.例えばアルツハイマー型では,神経細胞内にタウ蛋白,細胞外にアミロイドβという物質が蓄積するため,神経細胞が死滅して,脳の機能が失われていくことが知られています.そこで,そのような物質の蓄積のメカニズムの解明が認知症の治療の焦点になっています.

 漢方のマクロな視点はこの病気の本質の理解にも役立ちます.蓄積物質の正体は神経細胞の内部や表面の構造が破壊された残骸です.そのような病理産物の蓄積は,漢方では,症候から「痰湿」や「瘀血」として捉え,「陳皮」や「丹参」を含む処方で脳の清浄化が図られます.

 では,なぜ残骸が蓄積するほど神経細胞の破壊が進むのか? 漢方では,認知症に「痰湿」や「瘀血」を生じる基礎条件として,「気虚」・「血虚」・「陰虚」のような「虚証」が必ず見られます.つまり,体内の活動・休養の仕組みが虚弱のため,脳内の栄養分が供給不足または消耗し,組織を破壊して代償せざるを得ない飢餓のような状態にあるのでしょう.そこで,「虚証」の種類に応じて「人参」・「当帰」・「地黄」・「鹿茸」・「亀板」を含む処方で脳の栄養改善にも視野を広げ,治療の新展開が期待されます.


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