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No.99 視覚障害を改善・予防する漢方の発見

 現代医学における緑内障は,従来,眼圧の上昇による視野と視力の障害と定義されてきました.眼球内の硝子体の前部に分泌される房水の流通・排出が何らかの原因で停滞すると,眼圧が過剰に高まり,網膜を圧迫して障害に至ると考えられてきました.近年は,眼圧が正常範囲の緑内障も認められ,網膜を圧迫する他の原因があるのか,正常眼圧レベルを修正すべきか,未だ議論の余地があります.

 漢方では,飛蚊症のような視覚異常も含め,5種類からなる「五風内障」と総称されます.「風」の文字は,風が吹き荒れるような現象の要素を象徴しています.特に,休養不足から生じる「風」が重要です.「血虚」や「陰虚」で,全身の組織が栄養不足のため十分休養されないと,神経・筋肉の興奮・緊張に抑制が掛からず,けいれんやふるえなどを起こしやすく,「内風」と表します.眼球が「内風」で繰り返し圧迫を受けると,視覚障害に至ると考えます.

 漢方が見出した圧迫の原因となる「内風」を止めるには,「石決明」・「白僵蚕」などの鹹味のミネラル豊富な生薬で筋肉収縮を緩解する効果が知られています.「内風」の発生を予防するには,「当帰」・「地黄」・「枸杞子」・「亀板」などの甘・鹹味の滋養性の生薬で組織を養い,「血虚」や「陰虚」の体質要素の改善を図り,筋肉運動に抑制を利かせ安定させます.緑内障や飛蚊症の治療に新たな展開が期待されます.