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No.1 「辛味」の副作用は「酸味」や「甘味」で防ぐ

 本場中国の漢方では、処方を構成する各生薬がどんな「薬性」をもち、それをどんな薬効として活用でき、どんな副作用の原因になるか、常に意識して使うことが重んじられます。さらに、生薬をどのように配合したら副作用が防げるか、明確に理論づけられています。

 「辛味」の生薬には発散性・活発化の薬性があり、発汗解熱・鎮痛消炎・鎮咳去痰・血行 改善・代謝促進などの薬効として活用できますが、発汗過多・脱水・異化亢進・体力消耗 などの副作用の原因にもなります。「酸味」の 生薬には、その逆の収斂性・安定化の薬性が あるため、これを配合すれば、辛味の薬性を抑制し、発汗過多・異化亢進を防ぐことがで きます。また、補益性・保護性の薬性がある 「甘味」の生薬を配合すれば、発汗で体液・体 力が消耗するのを防ぐことができます。

 かぜで寒けがするとき使う「葛根湯」の配合生薬のうち、麻黄・桂枝・生姜・葛根がもつ「辛味」の薬性は発汗解熱の薬効として活用され、一方、芍薬の「酸味」、甘草・大棗・葛根 の「甘味」は副作用を防ぎ、比較的マイルドな処方の薬性に調整する役割を果しています。

 咳と薄い痰が多い症状に適する「小青竜湯」 の場合は、麻黄・桂枝・細辛・乾姜・半夏の「辛味」の薬性は鎮咳去痰の薬効として活用され、五味子・芍薬の「酸味」の薬性は副作用を防ぐばかりでなく、鎮咳の薬効を補助的に高めるためにも役立っています。