No.31 蓄積された不要産物を除去する薬性

2012-11-28

 現代医学的な意味での痰は,気道に紛れ込んだ病原体や異物を破壊・処理する仕組みが働く結果生じる病理産物です.漢方における「痰」は,気道だけでなく,いかなる流通経路にも発生する,より広範な組織活動の結果として体液中に蓄積される不要産物の総称です.順調に搬出・除去されなければ人体にとって有害で,諸器官・内臓の働きを障害する原因にもなると考えます.その粘稠と混濁の外観的な特徴から,漢方は「痰」の現象に,体液の濃縮をもたらす,組織活動の過程に内在する機能の失調・停滞(「気滞」)を見抜いています.

 「半夏」・「天南星」・「皂角」・「白芥子」・「蘇子」・「莱フク子」・「生姜」・「貝母」・「竹ジョ」・「カ楼」・「冬瓜仁」・「前胡」・「桔梗」・「ボッセイ」・「海藻」・「昆布」・「海テツ」・「海蛤殻」・「海浮石」・「牛黄」などの生薬は,「痰」を無と化す(化痰)作用があります.辛・苦・淡・甘・鹹味・芳香による,発散・乾燥・浸透・潤滑・軟化の多彩な薬性を利用し,人体各所の「痰」を除去します.

 「陳皮」・「枳実」・「厚朴」・「沈香」・「薤白」・「紫蘇」は,「気滞」を復調させる(理気)作用があります.辛味・芳香に特有の賦活・疎通効果と,苦味・重質に特有の抑制・鎮静効果の,双方向の薬性を利用し,「痰」の発生を助長している,各組織活動の停滞を解消するための機能調整の手段として使えます.「温胆湯」・「蘇子降気湯」・「半夏厚朴湯」・「カ楼薤白白酒湯」などの処方は,漢方流の洞察に基づいて化痰薬に理気薬を配合する知恵の結晶です.


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