女性生理の正しい理解のために

2015-09-09

女性の健康は生理の正しい理解から

 女性の生理は月経出血の開始日を第1日とし、25日~35日(平均29日前後)かけて、月経期、卵胞期、排卵期、黄体期の4期を1周期として巡回しています。周期調節法はこの4期に合わせて、各周期ごとに漢方薬を使い分ける中国漢方の新しい考え方で、西洋医学の生理的メカニズムに陰陽の理論を組み合わせた、中医と西医を結合した独自のものです。

月経期は子宮内膜の再生のために

健康的な女性 月経期は女性の生理周期における子宮内膜が再生する過程の前段階です。卵巣で原始卵胞が発育し始めるのと同時に月経期が始まります。つまり、新しい1個の卵子を迎えるための子宮の新しい環境づくり、基盤整備の過程ですから、おろそかにせず、順調に進むように配慮することが何より必要です。

 月経期には、子宮内膜の血管が収縮して血液の供給が止められることで、すでにその役割を終えたほとんどの粘膜層ははがれ落ち、その中に残された血液とともに溶けた状態となって、外に出されます。役割を終えたとはいえ、ある程度の量の組織と血液が失われますから、全身の栄養状態と体力は低下します。日常生活での配慮として、月経期には、心身の負担になるような激しい労働やスポーツなどはひかえた方がいいでしょう。また、強い寒さやひえに体や手足を直接さらすことや、冷たい食べ物や飲みものをとらぬよう気をつけましょう。

 さらに膣内は酸性ではなくなりますから、細菌やウイルスの子宮頚管内への侵入は容易になります。この時期、子宮内膜は基底層がむき出しになるなど、女性性器全体の防御体制が手薄になっています。月経血の中の白血球がその役割を補っていますが、免疫系全体に負担がかかる時期なので、からだを清潔にし、ストレス、過労や暴飲暴食などをさけ、摂生に心がけ、病原体の侵入を招かないようにしましょう。

月経痛の原因は血の滞り

『あなたの月経痛は「血瘀」から起こっている』

 月経痛は月経前、または月経期の下腹部・側腹部・腰部の痛みを言います。現代医学では、ひどい月経痛は月経困難症として治療の対象としています。月経困難症は、月経血に固まりが残る場合(膜様月経困難症)を含めた機能性のものと、子宮筋腫や子宮内膜症を原因とする器質性のものとに分けられます。

 機能性のものは10~30歳代、器質性のものは20~40歳代に多いことが知られています。しかし、両者の関連性ははっきりしていません。そのため西洋医学では別々のものとして扱われ、器質性のものの治療に重点が置かれています。

 中国漢方では、これらを血瘀(血の滞り)から説明しています。血瘀によって、女性では、月経前、または月経中の下腹部・側腹部・腰部の痛み、月経血の中の固まり、月経血がすっきり出ない、月経血が黒ずむ、不正子宮出血、月経の遅れ、無月経などを起こし、これを放っておれば、腹部の腫瘤(しこり)、圧痛、ひきつりを起こすもとととなります。このしこりには、うっ血ともなう結合組織の増殖から、子宮筋腫、子宮内膜症、卵巣嚢腫などまで含まれています。つまり、機能性の月経痛の原因となっている血瘀を放っておくと、しこりを作る器質性の疾患へ発展していくと中国漢方では考えています。

『痛む、しこる、黒ずむの血瘀を改善する活血薬』

 「痛む」、「しこる」、「黒ずむ」を血瘀の3大症状といいます。この血瘀を改善する漢方薬が活血薬です。月経痛、生理不順や子宮筋腫、子宮内膜症などのほかに、足腰のひえ、肩こり、冷え、のぼせ、足の静脈の怒張、舌が紫暗色、舌に黒い斑点、顔が黒ずむ、色素沈着などの症状があったら、血行が悪いとだけだと思わないで、疾患予防と健康維持のためにも活血薬を服用するとよいでしょう。

月経期は4期に分けられる

 月経期になると、脳の視床下部は脳下垂体に卵胞刺激ホルモンを分泌させます。この作用により、卵巣内では数個の原始卵胞が発育し始め、月経が終わる頃には、1個の卵胞のみが成長して卵胞ホルモン(エストロゲン)を分泌し始めます。卵胞ホルモンは血液によって卵巣から子宮にに運ばれ、月経ではがれ落ちた子宮内膜の再生・増殖を促進します。(これが卵胞期で1週間~10日間続きます。)

 卵胞が完全に成熟すると、分泌される卵胞ホルモンは急激に増加します。脳の視床下部は血液の流れによってこのことを察知し、脳下垂体に大量の黄体化ホルモンを分泌させます。この作用により、卵胞は卵子を排卵して黄体に変わります。黄体から分泌される黄体ホルモン(プロゲステロン)は、子宮内膜にある分泌腺の働きを活発にして、栄養素に富んだ分泌液(子宮ミルク)を蓄え、受精卵の着床・養育に備える態勢をとらせます。(これが黄体期で約2週間です。)

 脳の視床下部は日内リズムや感情変化に合わせ、自律神経を通じて内臓機能の調節をしていますので、不規則な生活や感情を無理に抑えたり、高ぶらせたりすることは、ホルモン分泌に悪い影響を与えます。

 中国漢方では、卵胞期に重点的に陰(血液と栄養素・水分などの物質面)を補う滋陰薬を用います。滋陰薬は月経にともなう血液不足の回復を早め、末梢血管に流れる血液の量を増やして、栄養素の不足を防ぎ、卵胞の発育と子宮内膜の増殖をささえ、次にくる排卵期と黄体期に備え、ホルモン分泌のためにも良好な条件を整えます。また、精神的ストレスやひえによる自律神経の失調、子宮筋肉の無用な収縮、血行障害にともなう月経不順・月経痛を起こしやすい体質を改善します。

基礎体温表をつけよう

 月経開始日から次の月経開始日の前日までを1周期とすれば周期の前半に比べて後半は0.3~0.5℃ほど高い基礎体温になるのが正常です。周期の前半低温期は、卵巣内では卵胞が発育し、子宮では内膜がはがれ落ち、再生する時期(月経期と卵巣期)にあたります。後半の高温期は、卵巣内では排卵後の卵胞が黄体になり、子宮では内膜に分泌液が蓄えられる時期(黄体期)にあたります。

 周期後半に基礎体温が高くなるには、黄体から分泌される黄体ホルモンによって、子宮内膜にある分泌腺の働きが活発になり、このため血液の供給が促進され、全身の物質・エネルギー代謝が活発になるからです。

『視床下部-脳下垂体-卵巣のホルモン分泌が順調にいくように』

 妊娠・出産を待ち望んでいる女性にとって、はっきりとした高温期が現れることが絶対に必要です。受精卵を確実に着床させ、胎盤形成までの養育を維持し、流産を防ぐためです。低温期から少なくとも0.3℃の差がある高温期へ1~2日で急激に移行し、10日以上安定的に維持しなければいけません。はっきりとした高温期があれば、脳の視床下部-脳下垂体-卵巣からなるホルモン分泌系がしっかりと働き、卵胞成熟-排卵-黄体形成という一連の過程が順調に進んでいることを示しています。

 漢方では、この黄体期(高温期)には、ホルモン分泌系の働きを改善し、腎の機能を高め、陽(活動性の高める機能)を補う補陽薬を用いて、妊娠・出産に必要な条件を作っていきます。

女性の生理と感情

『ホルモン系と自律神経によるコントロール』

 女性生理における卵巣と子宮内膜の周期変化は、生殖、妊娠、出産という機能を果たすために必要な過程で、本来、一定のリズムに従って維持されています。

 このリズムをコントロールしているのが脳の視床下部で、ホルモン分泌系と自律神経系を通じて規則正しい周期変化を起こしています。視床下部は広い意味で生命維持・自己保存の本能的な生理現象の全般をコントロールする中枢です。生理の各過程ごとに規則的なリズムをとる一方、外からの刺激や情報には対応しています。

 知覚神経を通して大脳皮質に集められた視覚・聴覚・触覚などの情報は、その内側にある大脳辺縁系へと送られ、どこで蓄積されている記憶・認識と照らし合わせて、すぐに意味づけされ、各種の感情(快・不快・好き・嫌い・喜び・怒り・楽しい・悲しい・満足感・焦り・安心・恐怖・愛・嫉妬など)や欲求・衝動(意欲、食欲、性欲など)が生まれます。その中心に位置する視床下部はホルモン分泌系と自律神経系を通じて、その感情や欲求にともなう行動に適した身体の態勢を整えます。

 自分の感情や欲求のままに行動することを抑え続けたり、悪い感情を起こすことばかり続いたりすると、視床下部が対応しきれなくなって、内臓の機能を失調させ、女性生理のリズムをコントロール機能にも悪い影響がでてきます。月経周期が乱れたり、排卵までの過程が順調に進まなかったり、着床の準備が不十分になったりします。

 逆に、ホルモン分泌系と自律神経系のアンバランスから感情や体調の乱れを生むこともあります。漢方では、このホルモン分泌系と自律神経系の両方に働き、気の流れを良くします。

女性の生理と栄養

『消化器系の大事な役割』

 胃腸を中心とした消化器系が活発に働いて飲食物がよく消化され、栄養素が効率よく吸収されされることは、人としての活動を維持するための絶対条件です。女性生理の生殖、神経、ホルモン、血液循環などの器官系についても同様です。しかし、あまりにも当然すぎるためか、また生理機能への過信もあってか、このことはむしろ軽視されがちです。

 実際に、栄養素の吸収が制限されば、各器官系への供給は悪くなり、その役割を果たす力が弱まり、衰えてきます。月経血の色がうすい、量が少ない、月経期が短い・遅れる・ダラダラ長引く、時期がくるい反復して出血する、高温期への移行がゆるやかなど、女性生理の器官系に関しても、不足と弱まりが見つかります。この状態の時に漢方では気を補う補気薬を用います。補気薬は消化器系の働きを活発して、全身の組織の栄養状態と体力を改善し、女性生理の器官系を健全な状態に回復させます。

 女性生理の器官系は、卵巣と子宮を中心とした生殖系、これをコントロールするホルモン分泌・自律神経系、血液の流れる循環器系などが含まれます。補気薬は、筋肉、粘膜・血液などを構成する細胞・組織でのエネルギーと物質の代謝を改善することで、子宮や血管の構造と運動をささえる筋肉の緊張性を高め、血管と血流をしっかりさせ、無用な出血を防ぎます。また、卵巣と子宮内膜の周期変化を力強く進めていく働きがあります。

生理にともなう心身の変化

『受精を準備する本能』

 女性生理の器官系は、各部の巧みな連携と共同によって、初潮から閉経までおよそ400回、25~35日の一定期間で、妊娠を準備するプロセスを繰り返しています。このプロセスには月経のほか、それぞれの期間に女性特有の生理的な現象がともなっています。

 月経期(3~7日間)から始まる約2週間の周期前半(月経期と卵胞期)は、卵子とその着床環境を新たに準備しなおす段階です。これに呼応して受精の準備を促進する意味で、本能的な感情・欲求は月経終了後に高まるリズムに設定されています。また排卵が近づくと、卵管まで精子の進入を受け入れる目的で、子宮の入り口ふさいでいた粘液の粘りけを低下させ、その量を増やします。帯下(おりもの)が起こる原因です。

 その後の周期後半(排卵期と黄体期)には、受精卵の着床・養育に備えるため、子宮内膜に再生された分泌腺が活動を開始します。これを助けるため全身の代謝が高められ、体温が0.3~0.5℃上昇します。月経前の1週間ほどはときにホルモン分泌・自律神経系の調節・抑制がきかず、イライラ、ゆううつ、不安、不眠、のぼせ、めまい、乳房の張り、胃腸の不調、むくみ、頭痛、肩こりなど、心とからだの両面に不調を起こすことがありますが、ふつうは月経の開始とともになくなります。

 このようなこころとからだの変化は、症状としては軽く、本来の正しい時期に起こるかぎり心配はありません。むしろ、各過程が順調に進んでいる証拠だと自身をもてばよいでしょう。しかし、症状が重く不快感が強いとき、起こる時期が違うとき、帯下が多かったり色や臭いがあるとき、月経痛・月経不順・不正な出血があるとき、感情・欲求がコントロールできないときは、放置すべきではありません。漢方には、それぞれの症状にきめ細かに対処し、正常化する方法があります。

「蓄える」時期と「排出する」時期がある

『陰から陽への転化をとらえよう』

 女性の体は中国漢方では7の倍数で変化し、7X2=14歳で初潮を、7X7=49歳で閉経を迎えると考えています。

 この変化は中国漢方では腎の機能によるもので、14歳前後で、腎の機能が一定レベルに達すれば、初潮を迎えることができ、49歳前後で腎の機能が衰えて、閉経となるのです。このことから腎の気(エネルギー)が一定のレベルに達しなければ、妊娠はできません。中国漢方では「腎は生殖の本」といわれる理由です。

 女性の生理周期は、「蓄えるじき(蔵)」の卵胞期と黄体期と、「排出する時期(瀉)」の排卵期と月経期の2つの状態からなっています。蓄える時期には、腎のしっかりと蓄える(封蔵)の作用と脾の漏れないようにする(固摂)の作用により、卵胞の成熟と子宮内膜が栄養を含んだ柔らかい状態にさせます。排出する時期は、肝の疏泄(伸びやかなエネルギーの代謝調節)の働きによって、しっかりと排卵し、月経血などをきれいに残さずに出します。

 中国漢方では人体を陰と陽の二元論で説明することがあります。女性の生理では卵胞ホルモンを陰と考え、黄体ホルモンを陽と考えます。月経期から卵胞ホルモンが増え始め、卵胞期にはさらに分泌が増えて、その分泌が最大になって排卵し、つまり月経期から陰が増え始め、さらに卵胞期には陰が増え、排卵期に陰が極まって、陰が陽に転化します。黄体期には黄体ホルモンが増え始め、最大に達したときに月経となり、つまり黄体期に陽が増え始め、月経期に陽が極まって、陽が陰に転化します。このように月経周期を中国漢方では陰陽の変化をともなって進行・転化すると考えています。

 私たちの周期調節法はこの西洋医学の生理メカニズムと中国漢方の陰陽転化のメカニズムを組み合わせたものです。


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