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No.95 隠れた傷の治りも良くする「田七人参」

 「田七人参」は,滋養強壮の効能で広く知られる「朝鮮人参」と同科同属の近縁種の植物の根を用いる生薬です.漢方的な薬効の尺度になる甘味と温める性質(温熱性)も共通ですが,体内で作用する対象の器官系が異なるため,「田七人参」は滋養強壮にはなりません.

 漢方では,甘味は補益・保護・緩和する作用を反映する味で,温熱性は活発化して疎通を良くする作用につながると考えます.このような「甘温」の薬性をもつ「朝鮮人参」は,主に「脾」(消化器系)に働くため,「気」や「水」を体に補給する機能を高め,体力を補う「補気」の薬効と,体液を補う「生津」の薬効を発揮し,衰弱・消耗した体の回復に役立つのです.

 同じく「甘温」の薬性をもつ「田七人参」は,主に「肝」(自律機能調節系)に働くため,その調節を受ける「血」が脈管外に出ないよう守り,出血を止める「止血」の薬効と,「血」の流れを活発にして,循環を正常化する「活血」の薬効を発揮し,傷の治りを速めるのに役立ちます.

 体の内・外部の組織に損傷を受けたとき,疾患・症状の発生過程に組織の損傷の関わりが考えられるとき,「田七人参」は,「止血」の薬効で内外の出血を速やかに収め,「活血」の薬効で欝血・腫脹を解消し,疼痛を鎮め,損傷の修復を速めます.体質改善を進める上での障害を克服する「療傷理損」の切り札です.