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No.112 40歳代の妊娠の基礎条件を整える漢方

 近年,結婚後の女性が妊娠・出産に前向きの気持ちになれる,または本気で取り組める余裕が持てるまでに40歳を超えてしまう場合が増えました.卵巣内の原始卵胞数は出生時より3桁ほど少なくなり,医学的技術の助けなしで自然な妊娠は難しくなります.実状に合わせて,少子化対策・子育て支援の一環として不妊治療の保険適用が拡大されました.

 漢方では,人体の恒常性維持・発育・成長・生殖・生命維持の機能を担っている器官系を一体として「腎」と総称します.「腎」には生命の原動力を生み出す「精」が蓄えられていると考えられています.女性では,「精」は出生後7年単位の変化の法則に従い,7×4=28歳頃までは成長とともに増進して最大に達し,7×5=35歳を超えると減少に転じるとされています.以後は「精」の回復を図らないと,生殖を担う「腎」の力が弱まって妊娠しにくく,生まれる子供に受け継がれるべき「精」も少なくなります.身体の組成を一定に保ち,老化に抗い,病気と闘う機能も衰えていきます.

 「腎」に「精」の蓄えが減少すると,「血」に転化して補充する余裕も,「陰」と「陽」を生み出す活力も低下します.「血」は卵胞の発育と子宮内膜の再生に必要な栄養供給を担い,「陰」は,卵胞が成熟し内膜が増殖する低温期の過程を安定させる働き,「陽」は,排卵後に卵胞が黄体化し内膜が分泌液で肥厚する高温期の過程を推進する力ですから改善が必要です.