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No.117 治すより防ぐための条件を整える漢方

 漢方薬には,病気を直接的に治す処方と,間接的に治りやすくなる条件を整える処方があります.前者は病気でなければ服用の意味はなく,後者は病気を防ぐのにも役立ちます.手っ取り早く症状を抑えればよいのではなく,再発しないよう病気を起こす背景も考えて改善を図るのが漢方の特徴で,一般に副作用が少なく体に良いと評価されてきた所以です.

 血液の流れの停滞を表す「瘀血」は,手足の冷え・肩こり・頭痛などの症状から,さらに,血液が固まって血栓・腫瘤を形成しやすく,血管へ負担がかかって出血を起こしやすく,あるいは,血液が細かく隅々まで届かず老廃物が滞留しやすくなって,広範な病気の原因になると認識されています.穏やかな薬性の生薬「丹参」を主とする「冠心Ⅱ号方」などの長期服用で「瘀血」が背景の病気を予防できます.

 血液の実質的な不足を表す「血虚」は,肌の血色と潤いがない・目が乾く・爪がもろい・髪の荒れ・めまい・こむら返りなどの症状から,さらに,全身組織の栄養供給不足で心身両面の機能に抑制が利かずに安定せず,痙攣・動悸・不安感・不眠を起しやすく,あるいは,組織の疲労・消耗からの回復が遅くなり,広範な病気の発生のきっかけをつくると認識されています.優れた薬性で役割が見直された生薬「当帰」を主とする「当帰養血膏」などの長期服用で「血虚」が背景の病気を予防できます.