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No.100 強暴な病邪と闘う自力をつける「霊芝」

 現代医学における悪性腫瘍は,遺伝子の変異が補修しきれない状況から,未分化な細胞が制御不能な増殖を始め,免疫監視をすり抜け,浸潤性・破壊性をもつ組織を形成し,再発・転移を繰り返し,生命を脅かす病気です.

 漢方では,腫塊の形成が生命を脅かす現象から,この病気をより広く捉えます.人体を構成する3要素「気」・「血」・「水」の不足から生じる「気虚」・「陽虚」・「血虚」・「陰虚」の悪条件で,人体を守る原動力である「正気」が弱められた上に,「気」・「血」・「水」の停滞から生じる「気滞」・「瘀血」・「痰湿」・「熱毒」という障害が集積して「癌毒」という強暴な病邪を生み出し,腫塊を形成して生命を脅かすと考えます.

 このため,「癌毒」のもとになる障害を解消できる生薬に,抗癌作用も認められることが多いのです.例えば,「莪朮」は「気滞」・「瘀血」を,「水蛭」は「瘀血」を,「シベリア霊芝」は「痰湿」を,「白花蛇舌草」は「熱毒」を解消できる生薬であるゆえに,抗癌にも役立つのです.

 この分野で最も有名な「霊芝」は,むしろ,「癌毒」と闘う「正気」に影響する条件を改善します.消化器「脾」と中枢神経「心」に働いて「気虚」を改善し,食欲を増進し,十分な休養をとれる態勢を整えます.こうして「正気」を回復し,強暴な「癌毒」と闘う自力をつけます.