メニューを開く

No.30 冷えきった人体機能を復活させる薬性

 漢方では,寒冷が手足・体幹・頭頸・関節・内臓など,各部に悪影響を及ぼしている状態を「寒証」と表します.体外から寒冷をもたらす気候・環境・飲食物が「寒証」の原因ですが,体内のエネルギー代謝の減退(「陽虚」)があると,「寒証」を起こしやすい体質になります.

 「呉茱萸」・「茴香」・「高良姜」・「草豆ク」・「草果」・「ヒ撥」・「胡椒」・「山椒」・「辣椒」・「艾葉」・「烏薬」・「細辛」・「桂枝」・「生姜」・「葱白」・「白シ」・「烏頭」・「麻黄」・「白芥子」・「硝石」などの生薬は,「寒証」を解消する(散寒)作用があります.共通の薬性は,温熱性とともに,辛味の属性としての発散の効果が強力です.服用すると人体各部を刺激し,血管拡張などで寒冷の影響を分散的に解消でき,「呉茱萸湯」・「安中散」・「小建中湯」・「当帰四逆加呉茱萸生姜湯」・「温経湯」・「陽和湯」に応用されています。

 「附子」・「肉桂」・「乾姜」・「丁香」・「補骨脂」・「益智仁」・「蛇床子」・「仙茅」・「淫羊カク」・「韮子」・「巴戟天」・「菟絲子」・「肉ジュ蓉」・「杜仲」・「鎖陽」・「沙苑子」・「胡桃」・「続断」・「狗脊」・「鹿茸」・「海狗腎」・「蛤カイ」・「海馬」・「海蝦」・「紫河車」・「冬虫夏草」・「九香虫」・「陽起石」などの生薬は,「陽虚」の回復を助ける(助陽)作用があります.共通の薬性は温熱性で,そのほか,辛味の属性としての鼓舞の効果,鹹・甘味の滋養・補益の効果があります.エネルギー代謝を支える機能を活発化して,寒冷に耐える力をつけることができ,「八味地黄丸」・「海馬補腎丸」・「至宝三鞭丸」の名処方として結実しています.