No.61 「血」を補うための生薬の役割づけの進歩

2012-11-28

 現代医学的な意味での血液とは少し異なり,漢方における「血」の作用は,全身組織へ栄養素などの必要物を供給するだけでなく,組織の再生・回復過程を支えるため,無用な活動を抑制し,安らかな休養態勢を維持する働きも含みます.そこで,「血」の不足の原因には,造血材料になる飲食物の摂取不足や吸収障害,造血機能の衰え,出血や血成分の破壊による失血だけでなく,組織再生に適するゆったりした血流をもたらす休養態勢への移行を阻む心身の緊張やリズム失調も考えられます.

 「補血」の基本処方は,宋代の公定書を原典とする「四物湯」です.処方を代表する君主にたとえられる構成生薬(君薬)は「熟地黄」で,濃厚な甘味・潤質の生薬の高い滋養の薬性で「血」を補います.君薬を補強しつつ副次的な役割も担う大臣(臣薬)は「当帰」で,甘味・潤質の滋養の薬性に加え,辛味・芳香の賦活・疎通の薬性で,体内の本来のリズムと流れを復活しながら「血」を補います.補佐と召使い(佐薬と使薬)は「芍薬」と「川芎」です.「芍薬」は酸味の収斂の薬性で体を保護・安定化し,「血」の消耗を防ぎます.「川芎」は辛味・芳香の賦活・疎通の薬性で「当帰」を助けます.

 現代の進歩した中成薬である「当帰養血膏」は,「当帰」の増量により臣薬の役割がかなり重みづけされ,さらに,甘味の補益の薬性の「阿膠」・「黄耆」・「党参」・「茯苓」の配合により,出血の予防,休養態勢の安定維持,消化吸収機能の促進効果も加えられた改良処方です.


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