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No.69 植物の旺盛な繁茂力が肢体の痛みを解消

 関節痛・筋肉痛・神経痛・腰痛などの肢体の痛み・痺れを解消するため役立つ生薬には様々な種類があり,処方配合にも様々な歴史的展開がありました.現代の「風湿豨桐丸(ふうしつきとうがん)」という中成薬(本場中国の漢方製剤)の配合内容から,鎮痛処方の進歩の過程が垣間見えます.

 キク科植物メナモミの全草は「豨薟草(きれんそう)」という生薬として,唐代から本草書に記載があります.辛味の発散,苦味の乾燥の薬性で,筋骨の間の「風」と「湿」の邪気を除去して鎮痛すると考えられ,宋代の医学書を原典とする「豨薟丸」という単味処方も知られています.清代には,クマツヅラ科クサギの幼枝葉「臭梧桐(しゅうごとう)」に同様の薬性が見出され,心身の緊張緩和にも役立つため,相互補完的な薬対として両者を組み合わせ,基本的な鎮痛処方「豨桐丸」ができました.

 清代には一方で,藤類(蔓性植物全般)が生薬として注目され,独立の分類項目として収載する本草書も出てきました.蔓を延ばし,はびこっていく旺盛な繁茂 力をもつ藤類は,煎じて服用すると,体内の「経絡」の障害を打破し,物質流通と機能連携を復活して,鎮痛に役立つ薬性をもつことが見出されました.

 コショウ科フウトウカズラの蔓茎「海風藤(かいふうとう)」は,清代の有名な鎮痛処方の成分にも採用された藤類です.また,蔓性植物ヤマノイモ科ウチワドコロの根茎を使う生薬「穿山竜(せんざんりゅう)」があります.これらを「豨桐丸」に組み込み,さらに,酸味の保護の薬性で鎮痙に役立つ,バラ科ボケの果実「木瓜(もっか)」も加味し,改良処方「風湿豨桐丸」が創製されたのです.