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No.14 エネルギー代謝を改善する薬性

 心身のいかなる活動のためにも,生命の維持のためにも,人体の器官や組織を機能させるエネルギーは,飲食物から吸収され蓄えられた栄養素を分解することで産生されます.このエネルギー代謝が弱ると,内臓の働きや体力の減退・冷え症・肥満の原因になります.これは漢方では「陽気」の不足に相当します.

 「陽気」の不足を速効的に補うには「辛温薬」を用います.辛味で温熱性の「附子」・「肉桂」・「乾姜」・「補骨脂」・「益智仁」・「蛇床子」・「仙茅」・「淫羊カク」・「韮子」・「呉茱萸」・「丁香」・「茴香」・「山椒」・「胡椒」・「辣椒」・「大蒜」などです.「陽気」を鼓舞・振奮するとされる「辛温薬」の作用は,ショウガやトウガラシによる刺激的な食感と体が温まる体験からも類推できるように,体内の器官・組織を刺激してエネルギー代謝を激しく活発化させる作用です.「八味地黄丸」・「右帰丸」・「附子人参湯」・「大建中湯」・「安中散」の主要成分として配合されています.

 「陽気」の不足をじっくり補うには「甘温薬」を用います.甘味で温熱性の「人参」・「黄耆」・「鹿茸」・「海馬」・「冬虫夏草」・「紫河車」・「蝦」・「羊肉」・「胡桃」・「肉ジュ蓉」・「鎖陽」・「沙苑子」・「菟絲子」・「巴戟天」・「杜仲」・「続断」などです.「陽気」を培補・充盈するとされる「甘温薬」の作用は,体内の器官・組織を滋養することでエネルギー代謝の本来の活発さを回復する作用です.「補中益気湯」・「玉屏風散」・「十全大補湯」・「帰脾湯」・「至宝三鞭丸」・「海馬補腎丸」・「参茸丸」・「参茸補血丸」に活用されています.