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No.82 「帰脾湯」製剤に期待される健忘の改善

 「帰脾湯」は,TIME誌(2014/4/28)記事で,不眠症の婦人への適応処方として紹介されたことが記憶に新しいですが,日本で新たに発売された顆粒製剤「心脾顆粒」には,効能・効果として健忘(の改善)も認められています.

 近年,医薬品の効能・効果には,エビデンス(科学的根拠・確証)として,細胞・遺伝子・分子・原子の(ミクロな)レベルの作用の解明が求められます.現代薬とは由来が違う漢方薬にも,今や例外なく求められます.さらに,目的のある健康食品に限らず,一般の食材にまで,生活習慣病や認知症などの治療や予防に有効なミクロな作用の発見が,過度に期待される風潮があります.ミクロなエビデンスが一部で得られたからと,漢方薬が適否かまわず安易に選用され,食品が栄養面を無視して爆発的に流行することがあるのも実情です.

 漢方薬の効能・効果は本来,症状改善などの現象から認識される(マクロな)作用です.「帰脾湯」は,「人参」・「黄耆」などで,胃腸を中心とする消化器系を表す「脾」の働きを高め,「当帰」・「竜眼肉」などで,心臓を中心とする循環器系と脳を中心とする中枢神経系を一体に捉えた「心」への栄養供給を助けて,健忘の改善にも役立つと考えられています.今後は,漢方のマクロな認識を尊重し,全身を見渡す改善の考え方をヒントにして,記憶力を回復するミクロな過程の解明に進展が望まれます.