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No.97 「シベリア人参」として再発見された価値

 「シベリア人参」は「朝鮮人参」と同科の植物エゾウコギ (刺五加, エレウテロコック) の根を用いる生薬です.漢方では,ウコギ属の根皮を「五加皮」と総称し,2千年前から主に足腰痛・関節痛に対する鎮痛の目的で煎服されてきました.特にエゾウコギは,シベリアにも自生するため,20世紀に旧ソビエト連邦の研究機関で,極寒・猛暑の過酷な自然環境や,様々なストレスに耐える人体の力を強める現代医学的な作用が発見され,漢方における「朝鮮人参」と比肩する価値がある意味の「シベリア人参」の呼称で,広く滋養強壮に愛飲されるようになりました.

  「シベリア人参」の漢方のマクロな薬性の尺度は「辛温」です.辛味があり,体を温める性質(温熱性)です.辛味は人体に発散・疎通・振奮の作用を起こし,温熱性は辛味の作用を増強します.作用の対象は「肝」と「腎」です.「肝」は筋肉の運動の条件を整え,「腎」は骨を堅固に保つ働きがあるため,「シベリア人参」は,発散の薬性が,筋骨に生じた痛みのもと「風湿」を追い出し,振奮の薬性が「肝」と「腎」の働きを活発にして筋骨の回復を助けます.

 広い意味では,「肝」はエネルギーを全身に行き渡らせるリズムを発振し,「腎」は生命を維持する基礎を固める役割を果たす臓器です.両臓を活発にする「シベリア人参」は,ストレスを発散しやすくし,生命の危機に耐え抜く力を強める作用にもなる薬性を持つのです.