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No.4 「酸味」の生薬は組み合わせて生かす

 漢方の薬性理論によれば、「酸味」のある生薬には一般に、収斂性・安定化の薬性があります。この薬性は、皮膚や粘膜を引き締め、水分・栄養素・エネルギーが体外に漏出したり放散するのを抑え、各組織の働きを落ち着かせるのに役だつので、多汗・口渇・乾咳・下痢・多尿・帯下・遺精・出血・興奮・消耗などがおさまらない状態に応用されます。

 このように体内に保たれるべきものが失われやすい状態には、その原因として各組織の構造や仕組みの弱まりとか、代謝バランスやリズムの失調などが内在すると考えられます。そこで,酸味で組織を引き締める効果にのみひたすら頼って症状を抑え込むことには無理があり,症状がぶり返し続けるばかりか、原因がさらに悪化することにもつながります。

 漢方では、酸味の薬性を生かしつつ、無理な応用の副作用を防ぐため、巧みに生薬を配合して処方を考案しています。多汗・口渇・息切れなどの症状に適用する「生脈散」は、酸味の「五味子」の収斂性で体の消耗を抑えつつ、甘味の「人参」と「麦門冬」の補益性で、内在する仕組みの弱まりの改善をはかっています。

 不眠・焦燥・動悸に適用する「酸棗仁湯」は、酸味の「酸棗仁」の収斂性で栄養素の消耗を抑えて心身の休養を助け、消耗のもとになる代謝亢進を苦味の「知母」の沈降性でしずめ、代謝亢進につながる心身のリズムの失調を辛味 の「川キュウ」の活発化の薬性で復調させることで、薬性を連携させて無理なく活用しています。