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No.24 夏の体の水分調節を助ける薬性

 暑い季節は汗をかくことが多いので,脱水を起こさぬよう十分な水分補給が必要です.一方,のどが渇くからと惰性的に飲み物を取り過ぎていると,胃腸やその他の器官に負担がかかり,体液代謝の流れが停滞し,水分がだぶついているのに,必要な所に届かないことにもなりかねません.漢方では,消化器から吸収され全身に送られ,有益に活用されている水分を「津液」と呼び,一方,体液代謝の流れから外れ,消化管内・組織間などに停滞して役に立たない水分を「湿濁」と表します.

 「沙参」・「玉竹」・「西洋参」・「太子参」・「人参」・「麦門冬」・「生地黄」・「五味子」・「烏梅」などの生薬は,薬性の尺度として甘味や酸味をもち,各組織を保護・収斂する結果として「津液」を生み出す(生津)作用があります.「生脈散」という処方に活用されています.トマト・スモモ・モモ・アンズ・レモン・ライチ・サ-ジ・ナシ・ミカンなどの果実にもこの作用が認められています.

 「カッ香」・「蘭草」・「香ジュ」・「荷葉」・「白扁豆」・「蒼朮」・「厚朴」・「白豆ク」・「草豆ク」・「草果」などの生薬は,薬性の尺度としては芳香があり,内臓を刺激し,代謝の活発化により「湿濁」を無と化す(化湿)作用があります.「カッ香正気散」という処方の成分として活用されています.バジル・オレガノ・カルダモン・サンショウなどのハーブにもこの作用が認められています.

 このように漢方には,水分の過不足を是正するのに役立つ知識と手段が完備しています.