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No.43 自律機能系の興奮・過熱を鎮める処方

 「竜胆瀉肝湯」という漢方薬は,金・元・明・清代を経て生薬構成が確立された「瀉肝火」の代表処方です.日本では,主に尿路感染症に適応する処方として知られていますが,本来の適応対象はより広範です.「肝」は現代的な肝臓だけでなく,心身の活動/休養などの態勢転換のため働く自律機能調節系に相当し,調節されるべき器官・組織の機能亢進や炎症で,上気・紅潮・発赤など,火が燃え上がるように現れる心身の興奮・過熱症状の解消が目的です.3薬効の生薬群から構成されます.

 「清熱瀉火」という薬効を発現させるために配合された生薬は,「竜胆」・「山梔子」・「黄芩」です.「肝」を中心に作用し,寒涼性に加えて苦味をもつ生薬に特有な清浄化・抑制の薬性が共通です.自律機能系の器官・組織の亢進や炎症を抑え,心身の興奮・過熱を鎮めます.

 「清熱利湿」という薬効を発現する生薬は,「木通」・「車前子」・「沢瀉」です.広範な系統に作用し,寒涼性・滑性に苦味・淡味を併せ持つ生薬から生じる清浄化・排水の薬性が共通です.各系統の器官・組織からの熱の放散の障害になる停滞水分の除去を促進します.

 「滋陰養血」という薬効を発現する生薬は,「生地黄」・「当帰」です.甘味の生薬が有する補益・保護の薬性が共通です.自律機能系の亢進や炎症の継続で失われる,各器官・組織へのゆったりした血流による休養過程の回復を助け,栄養素と水分の消耗を防ぎます.