No.36 神経を休養させて心臓をいたわる薬性

2012-11-28

 「天王補心丹」という漢方薬は,元代の文献に原型処方の記述がありますが,現在一般に応用されるのは,明代の書物に記載された改良処方です.多様な薬性を内包させた複雑な生薬構成を存続しつつ,主要な薬性の生薬ほど相対的に量を多くして,配合にメリハリをつけたのが特徴で,「滋養安神剤」の代表処方のひとつとして確立されています.

 「天王補心丹」の構成生薬のうち,「生地黄」・「麦門冬」・「天門冬」・「当帰」は,体内の「心」と「腎」の系統を中心に作用し,甘味の生薬に共通する滋養・補益の薬性があり,「滋陰補血」の薬効につながります.関連の組織の「陰血」の要素(栄養と潤い・休養の働き)の不足を改善する効果の一環として,脳の興奮性や心拍を適度に抑制する生来の仕組みを自然に回復させます.さらに,「玄参」・「五味子」・「人参」・「茯苓」・「丹参」・「桔梗」を少量配合することで,苦・鹹・酸・淡・辛味の多様な薬性がうまくかみ合って,円滑な改善と回復に役立ちます.

 「酸棗仁」・「柏子仁」は,「心」の系統に作用するのが共通で,甘味と酸味の生薬が有する滋養・補益の薬性が,とりわけ,神経系の鎮静・安定の効果のみにつながり,「養心安神」の薬効をもたらします.「神」の働き(意識・感情・思考など,広義の精神の働き)を安定させ,不眠・多夢・焦燥・不安・動悸などの解消に役立ちます.「遠志」・「丹参」・「五味子」・「人参」・「茯苓」の少量配合で,多様な薬性がかち合うことなく,鎮静効果が増補されます.


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