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No.83 「亀鹿仙」の加味で「地黄丸」を進化型に

 漢方の長所は,全身を見渡し年齢を考慮して病気の背景を探り,改善を図ることです.人体の要素を大きく捉えて病態を認識します.最も大きな要素分けに「陰」と「陽」があります.

 人体の「陰」とは,器官や組織の水分や栄養分など,物質的な蓄えの充実と,心身を休養させる働きを象徴します.「陰」が不足すると,ほてり,のぼせ,めまい,寝汗,乾きやすい,舌が赤く,無苔・裂紋などが現れます.

 人体の「陽」とは,エネルギーの産生,活発な機能,心身を活動させる働きを象徴します.「陽」が不足すると,疲れやすい,体の力が湧かない,冷えやすい,水分が溜まりやすい,舌の色が薄く,胖大・歯痕などが現れます.

 年齢的な「腎」の衰えで「陰」の不足が進むと,「陽」の抑制がきかず,ほてり症が治まらず,他方,「陽」が起こる基盤を失い,冷え症も生じやすく,さらに,「陰」も回復しにくくなります.漢代に考案された,「陽」を補う目的の「八味地黄丸」に,「陰」を補う「六味地黄丸」が組み込まれているのは,そのための配慮です.

 宋代以降,鹹味で滋養性の高い動物生薬が用いられ始め,明代に,「亀板」と「鹿角」で強力に「陰」と「陽」を補う名方「亀鹿二仙膠」が生まれました.これを加味した「六味地黄丸」の進化型処方である「左帰丸」も考案されました.