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No.89 痛みの解消に漢方の全体論的な改善法

 現代医学では,体のどこかに痛みが出たら,骨・軟骨・関節・靭帯・腱・筋肉・神経・血管・内臓のどこに,圧迫・変形・破壊・炎症・機能亢進など,どのような,細胞または分子レベルのミクロな病変があるのか特定して,それぞれ異なる病気として分類し,個別的な治療法の確立を目指してきました.しかし,ミクロな原因の解明と治療に至らず,鎮痛薬が処方され続ける場合も少なくありません.

 漢方では,体質・年齢も考慮し,現象から分析される,痛みを起こす病態を広く全体論的に捉えます.「気」・「血」・「水」などのマクロな要素の変化に対応し,基礎改善を図ります.

 「人参」・「黄耆」で,消化器系「脾」の機能を高めて,あらゆる力のもとになる「気」を補い,筋肉の再生を促して,適度な筋緊張を保ち,身体の構造と運動を支える力を強化します.「当帰」・「丹参」で,「肝」に蓄えられる栄養を運ぶ「血」の流れを増し,自律機能を安定させ,十分な休養をとらせ,筋肉の柔軟性を維持し,強ばりで運動に無理が生じないようにします.「地黄」・「亀板」で,「腎」が制御する体液代謝を改善し,組織を浸して機能を抑制する役割のある「水」を潤沢にします.「鹿茸」・「杜仲」で,「腎」に蓄えられる生命力のもと「精」の加齢による衰えを補い,恒常性維持能力を高め,骨の脆弱化の進行を抑えます.鎮痛のためにも身体の立て直しを考えるのが漢方流です.