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No.90 治療困難な皮膚病への漢方の取り組み

 現代医学は,病気の原因として分子レベルのミクロなメカニズムを解明し,確実な診断と治療を目指してきました.アトピ-性皮膚炎でも,その発生や進行に関わる重要な物質を体内で作り出す遺伝子配列が最近解明され,画期的な治療法の開発が期待されています.現在の治療法は,主に体内の緊急時の生理作用を担う副腎皮質(ステロイド)ホルモンの,免疫を抑制するメカニズムを利用しています.

 漢方は,現代医学では得られない良効を発揮することがあり,今や世界的に注目され,治療困難な皮膚病の分野での期待もあります.それは漢方が,万能を有する神秘の魔術などではなく,全体を見渡す視野で,現象に即してマクロに病態を捉え,現代医学の盲点を突く治療の展開が期待できる医学だからです.

 漢方では,皮膚病の発疹は「熱」の現れの場合が多いので,まず,熱を冷ます「清熱薬」を適応します.発疹の赤みが強い・出血しやすい「血熱」傾向があれば,「涼血」の要素をもつ「生地黄」・「大黄」を使います.水泡になる・滲出液が出る「湿熱」傾向があれば,「燥湿」の要素をもつ「竜胆」・「黄芩」を使います.化膿しやすい・痛みが強い「熱毒」傾向があれば,「解毒」の要素をもつ「金銀花」・「野菊花」を使います.アトピー性皮膚炎などの治療が困難なことは変わりませんが,現象の傾向に応じて改善を図り,着実に進めるのが漢方流です.