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No.91 婦人病の治療を補完する漢方の基礎改善

 現代医学は,月経困難症・不妊症・更年期障害など婦人病の治療にも,生理現象の分子レベルのミクロなメカニズムを解明し,ピンポイントの治療を目指してきました.不妊の原因に女性ホルモンの分泌不足があれば,人工的に分泌を促進する方法,子宮筋腫や内膜症が女性ホルモンで悪化するならば,分泌を抑制する方法が治療として確立されました.

 しかし,女性ホルモンの分泌不足は,分泌に必要な卵胞の十分な発育が自然に進まないためで,また,女性ホルモンで内膜症などが悪化するのは,月経で排出されるべき,役目を終えた内膜組織が体内に残留して増殖するためです.ホルモン分泌を強制的に促進または抑制する治療にはもとより無理があります.

 漢方は,全体を見渡す視野で現象を分析し,病態の基礎にあるマクロな条件を捉えて改善を図ります.漢方薬の改善効果から推定すると,卵胞の発育不良は,全身の組織へ栄養を供給する血液流入の不足傾向「血虚」の影響と考えられます.また,筋腫や内膜症などの腫瘤は,全身の組織から老廃物を搬出する血液還流の停滞傾向「瘀血」の影響で,月経血が体外に順調に排出されず,腹腔内へも逆流することから形成されると考えられます.そこで,「当帰」などの生薬で「血虚」の状態を回復し,「丹参」などの生薬で「瘀血」を解消することが,婦人病の治療を補完する基礎改善になります.