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No.92 漢方による更年期障害のマクロな改善

 現代医学は生理現象や病気を起こすミクロなメカニズムを解明し,診断と治療に応用してきました.更年期女性は卵巣内の原始卵胞が残り少なくなり,脳から卵胞を発育させる命令を受けにくく,発育卵胞から分泌される卵胞ホルモンが少なくなります.脳は卵胞を無理に発育させようと命令を強める結果,更年期特有の激しい症状が起こります.現代医学は人工的にホルモンを補充する方法で,脳からの命令を和らげ,更年期症状を緩めます.

 漢方は全体を見渡して,現象から分析される病態のマクロな要素を捉えて,改善を図ります.卵胞ホルモンが成熟期女性の生理周期内で主に役割を果たすのは卵胞期で,周期前半の月経後に子宮内膜を再生する過程です.周期後半の黄体期に「陽」の働きが優勢になり,エネルギー産生を促して基礎体温を高温相にする前の段階として,卵胞期に優勢になるのは,体を安らかに休養させ,基礎体温を低温相に保ち,組織への栄養の同化を促す,「陰」の働きです.この働きが更年期に減退します.

 更年期には,卵胞ホルモンの分泌低下で生理周期が成立せず,「陰」の働きの減退により,手足のほてり・体の熱感・微熱・寝汗などの「虚熱」が起こり,全身の組織に栄養・潤いが不足し,乾きやすくなります.これは「陰虚」として,「地黄」・「亀板」・「女貞子」・「麦門冬」・「沙参」などの「補陰薬」で改善を図ります.