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No.8 「温熱性」の生薬にも種類がある

 「温熱性」とは,その生薬を服用すると体が温かく・熱くなる,つまり,体を温めるように働くという意味です.薬性理論によれば,温熱性の生薬は内臓・器官の機能を鼓舞し,代謝を活発化する作用があり,体の冷えとその悪影響の解消に役立ちます.温熱性には生薬の種類により度合の強弱があり,温める作用にも特色があるので,体質や状況に応じて生薬を賢く選ぶことが副作用を防ぐこつです.

 温熱性の強い生薬のひとつに「附子」があります.辛味のための活発化の薬性も兼ね備えているため,強力に内蔵機能を勢いづかせ,エネルギー代謝を激しく活発化させ,冷えた体を速効的に温めます.「八味地黄丸」・「真武湯」・「麻黄附子細辛湯」に配合されています.

 同様に冷えに用いるものでも,比較的穏やかな温熱性をもつ生薬に「黄耆」があります.甘味による補養性と昇浮性を兼ね備え,内臓や皮膚の本来の機能を支える力を養います.こうして,代謝を促進しつつ,体表からエネルギーが無用に失われないよう守り,無駄なく効率的に体を温める力を回復します.「補中益気湯」・「玉屏風散」に配合されています.

 もうひとつ,冷えに用いる穏やかな温熱性の生薬として「当帰」があります.辛味・芳香による疎通性と,甘味による補養性を兼ね備えています.末梢血流量を増やし,温められた内部の血液をより多く体表に送り,皮膚を栄養しながら手足を温める仕組みを助けます.「四物湯」・「当帰養血膏」に配合されています.