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No.9 「寒涼性」の生薬は誤解と無知を正して

 「寒涼性」とは,その生薬を服用すると体が寒く・涼しくなる,つまり,体を冷やすように働くことを表しています.薬性理論によれば,寒涼性は広い意味での熱を冷まし,熱性 の症状を抑え,熱っぽい状態を鎮める作用につながる薬性です.解熱・消炎・鎮静などの薬効として,全身としての発熱・熱中症・代謝亢進・興奮症状や,局所症状としての炎症・充血などの解消のために活用できます.

 しかしながら,漢方薬や食物について一般の多くの人々の先入観として,体を温めるものは何でも体に良く,体を冷やすものは全て体に悪いという誤解があります.一方で,身近な民間薬として愛用されている生薬には,「十薬」(ドクダミ)・「ヨク苡仁」(ハトムギ)・「決明子」(ハブソウ)・「番瀉葉」(センナ)・「山梔子」(クチナシ)・「黄柏」(キハダ)・「芦薈」(アロエ)など,冷やす薬性(寒涼性)の生薬がかなり多いことが,多くの人々に全く意識されていないのも事実です.寒涼性の生薬をうまく使って副作用を防ぐこつは,熱を冷ます基本の薬性を知って,体質や状況に合った生薬を賢く選ぶことでしょう.

 とりわけ,栄養素や水分が消耗しやすい体質や状況には,特有の熱性症状(顔面紅潮・のぼせ・手足のほてり・夕方や夜の熱感・微熱・寝汗)がともないます.これは悪循環に陥った代謝亢進による熱なので,単なる寒涼性の生薬で冷やそうとしても悪化させるだけです.寒涼性と滋潤性を兼ね備えた「沙参」・「玉竹」・「麦門冬」・「天門冬」・「西洋人参」・「玄参」・「亀板」・「生地黄」・「知母」・「菊花」などを選びます.