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No.21 呼吸器と皮膚に作用する薬性

 胃腸から吸収され,肝臓に蓄えられた栄養素が,エネルギー源や物質原料として動員されるときは,必ず肺循環をいったん経由して,そこで取り込まれた酸素と一緒に全身の組織に送られます.肺循環は活動態勢では,余分な血液を体循環へと絞り出して,物質供給と水分代謝を促進します.漢方では,このように全身に必要な物質・水分・エネルギー・パワーをあまねく行きわたらせる役割を重視し,「肺」をガス交換・体液調節・熱代謝・体表の防衛に関わる機能系として広く捉えています.

 「麻黄」・「紫蘇」・「辛夷」・「蒼耳子」・「細辛」・「薄荷」・「桑葉」・「蝉退」・「浮萍」・「牛蒡子」・「杏仁」・「紫オン」・「前胡」・「桔梗」・「芦根」などの生薬は,薬性としては,辛味または軽質の生薬に特有の昇浮性・発散性が共通で,体表血管の拡張・発汗促進により,あまねく全身に行きわたらせる「肺」の機能を直接的に助ける(宣肺)作用があります.呼吸器や皮膚など,「肺」系の機能を障害する病原体の感染やアレルギーなどによる諸症状の解消に使われます.

 「人参」・「黄耆」・「蛤カイ」・「冬虫夏草」・「胡桃」・「沙参」・「天門冬」・「麦門冬」・「百合」・「玉竹」・「西洋参」・「銀耳」・「燕窩」・「阿膠」・「五味子」・「銀杏」・「烏梅」・「訶子」などの生薬は,薬性としては,甘・鹹・酸・渋味の生薬に共通の補益性・保護性をもち,「肺」が機能を果たすため必要な組織の活力や栄養などの要素を補う(補肺)作用があります.呼吸器や皮膚の疾患の根本改善で「玉屏風散」・「参茸丸」・「生脈散」・「八仙丸」・「養陰清肺湯」に活用されています.