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No.34 喘息に適用される2系統の薬性

 呼吸困難・呼吸促迫・喘鳴など,広い意味での喘息の症状をともなう疾患・病態の治療や改善に役立つ生薬を,漢方では「平喘薬」と呼び,薬性の異なる2系統に分類しています.

 「蘇子」・「杏仁」・「款冬花」・「旋覆花」・「紫オン」・「前胡」・「馬兜鈴」・「テイレキ子」・「桑白皮」・「半夏」・「厚朴」などの生薬は「降気平喘薬」と総称されます.苦味・重質・寒涼などの生薬に特有の沈降の薬性があり,主に「肺」系の組織に作用します.体内で,下がるはずのものが下がらない原因となる,筋肉の過剰な緊張・収縮・痙攣を抑制する効果で,気管支を拡張し,気道の通過障害を軽減する薬効につながります.「蘇子降気湯」・「定喘湯」などの方剤に配合され,喘息症状を抑え,発作が起こらないようにしていく目的で活用されています.

 「蛤カイ」・「海馬」・「紫河車」・「冬虫夏草」・「補骨脂」・「胡桃」・「山茱萸」・「五味子」・「沈香」・「磁石」などの生薬は「納気平喘薬」と総称されます.鹹・甘・辛・酸・渋味の広範な生薬の属性からもたらされる補益と摂納の薬性があり,「腎」に作用することが共通です.「腎」系に属する泌尿・免疫・内分泌・神経系の組織を養い,体液調節から呼吸調節まで基礎的な機能を改善し,外から清気をしっかり取り入れてエネルギー産生に供給できるよう,呼吸器系の能力を根本的に回復させる薬効につながります.「人参蛤カイ散」・「参茸丸」・「八仙丸」などに配合され,喘息症状を起こす人の,主に緩解期の確実な体質改善に役立ちます.