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No.40 胃腸に効く薬性を結集させた漢方処方

 「香砂六君子湯」は,本場中国では広く知られている,「四君子湯」の高度に進歩した加味処方です.「四君子湯」は宋代の公定書『和剤局方』に収載された「益気健脾」の基本処方で,明代の書物では,2味加えた「六君子湯」の構成が確立され,さらに加味を重ねた数多くの処方のうち,「香砂六君子湯」の現在の形が,中国漢方の教科書に載るほどの名処方になりました.胃腸などの消化器系(「脾」)を3種類の薬効で健やかにする8生薬で構成されます.

 「益気健脾」の薬効を発揮する生薬が「党参」・「白朮」・「炙甘草」です.薬性としては,「脾」に作用するのが共通で,甘味による補益・滋養性があります.消化器系の組織を養って,「気」(機能の活力)を穏やかに補うことにより,消化吸収能力を着実に高める効果があります.

 「去湿健脾」の薬効を発揮する生薬が「茯苓」・「白朮」・「半夏」・「陳皮」です.同じく「脾」への作用が共通で,淡味による浸透・排水性,苦味による乾燥性,辛味による発散性で,消化管内・組織間に停滞・貯留した不要水分(「湿」)を除去し,消化器系の負担を軽減します.

 「理気健脾」の薬効を発揮する生薬が「木香」・「縮砂」・「陳皮」・「半夏」です.やはり「脾」への作用が共通で,芳香による賦活性,辛味による発散・疎通性,苦味による抑制・緩解性の組み合わせで,「気」の流れに停滞をなくし,消化管運動・消化液分泌の連携を正常化し,リズムを快調にし,食欲増進にも役立ちます.